修理・基本とシャッター部
 
基本的な注意事項

個体によって故障の程度や修理履歴に相違がある。そのため、全ての個体に同一の修理法が適用出来るわけではない。加えて、各個人の経験を加味して修理に望まなければ、作動の可否はもとより、最悪の場合には破損の原因ともなる。出来そうに無いと思ったのならば、その時点で修理作業を中止して「勇気ある撤退」を。
また、冷たい言い方になってしまいますが、修理マニュアルを入手したからと言って修理が可能になるわけではありません。プラモデルの説明書のように親切に書いてある訳ではなく、適度な経験を身につけていなければ理解できない部分、理解出来ても実行に移せない記載が多々あります。
なお、「下記の説明を見て試してみたが失敗した」というクレームには応じられません。
 
技術的な注意事項


・各部材を取り付ける地板がアルミ素材の場合がある。強くネジこんだり、斜めに入れてしまうと容易に削れて修理不可となるので注意。加えて、ネジそのものも軟らかい素材を使っているものがあるので、取り扱いに注意。

・ワッシャ類が入っていた場合には必ず保管しておくこと。入れなくても動く場合もあれば、入れなければ動かない場合もある。入れると動かなくなる場合もあるが、その時に初めて除去する。特に、ファインダ後部に位置する、内部機構とボディシェルの間に入れるワッシャは重要なので最初にニス留めしておいても良い。
・各機構を正しい配置に組上げた場合でも、取り付け時に生じた地板の歪みで作動が鈍る場合もある。軽快さを欠く場合にはネジを緩めて位置調整をしたり、ワッシャの追加等を試みる。

・スプリングの張力を高めて運動力を引き出す修理は部品の変形や破損を招く原因となる。清掃や注油で適切な運動を可能にすれば最低限の張力で作動する。その結果が軽快な動きとなる。
 
上カバーの外し方
プラクチシックス、ペンタコンシックス共に、基本的な修理は上カバーを外して行う。
1:レンズマウントリングを外す
レンズマウント下部にあるネジを外す。特殊な形状なので無くさないように。その後、左回りに回転させてリングを外す。

2:フロントカバーを外す
正面2つと底部のネジを外すと、フロントカバーが外れる。

3:巻上げレバーとシャッタスピードダイアル中心の部品を外す
プラクチシックス系は、溶剤を用いなくても貼革を剥がすことが可能な事が多い。ペンタコンシックスの場合には針やドライバーを使って開けた形跡が見られる事が多いが、オリジナルであればエタノールを流し、表面にガムテープ等の粘着テープを貼って剥がすと無駄な傷を付けずに済む。
て剥がすと無駄な傷を付けずに済む。

4:巻上げレバーとシャッタダイアルを外す
プラクチシックスの場合は巻上げレバーとカウンターの着脱は容易だが、ペンタコンシックス系はカウンター部にボディ内部から延伸したコイルスプリングが掛けられているので、張力と掛け方を確認して外す。
シャッタダイアルにクリックストップがあるモデルでは、クリックを与えるための鉄球が入っているので、それを紛失しないように注意する。(紛失した場合には直径2ミリの鉄球を補う)

5:上カバーを外す
外周に見えるネジを全て外す。プラクチシックス中期以降の製品はファインダ周りのネジの下にワッシャが入っているので、紛失しないように注意する。

6:フォーカシングスクリーン枠を外す
大まかな修理であれば外す必要はないが、外した方が作業はやり易い。正面から見えるネジと背面のネジを外せば良い。
 
シャッター速度調整
1:幕速の調整
幕速調整は、画像中「01」及び「02」の部品を回転させて強めたり弱めたりして行う。
幕や油の硬化といった経年変化に伴う作動不良の初期段階(例:1/125秒がバルブになる)では、幕速を上げて解決できる部分もあるが、あくまで力技であることに留意したい。
2:シャッタスピードの調整
シャッタスピードは調速部が司っている。緩速度(スロースピード)調節はガバナー部にあるネジの出し入れで行えるが、調速部の破損例は極めて少ない。手を入れたくなる部位だが、洗浄と注油に留めておきたい。シャッタダイアルを回転させてみて、スローガバナが円滑に動作する(出入りする)状態であれば、調速部には問題が無いと思われる。
緩速度の掛かり具合、バルブ時の問題の調整には、コイルスプリングを押さえているネジ④とネジ⑥を緩め、スプリングの位置を調節することが多いが、力加減が難しい。
 
3:幕走行の確認
幕が緑の○へスムースに往復できるのが理想的な状態だが、動きが悪い場合には歯車の部分を清掃する。この歯車は2段構成になっていて、上が先幕、下が後幕の動きに連動する。
シャッタ幕に手を入れる場合、赤い○で囲んでいる部分は幕走行や巻上げの感触等を調節できる部分ではあるが、歯車が外れて噛み合わせがズレると大変厄介な修理になるので出来る限り触れない方が良い。
手前が先幕、上が後幕の支持部に近いが、一体構造のため、厳重に注意して調整しないと、片側が浮き上がり、最悪の場合には歯車が外れる。
そのほか、作動不良の原因に地板や歯車、シャッタ幕軸類の直角・平行が出ていない場合がある。これは内部機構を取り出して修理することになる。
ごく稀に、シャッタチャージが効かない個体が見られる。その時は、オレンジ色の○で囲んだ部品の変形、破損が考えられる。原因として、経年変化よりも、修理段階で幕速を強めすぎた場合に受けたダメージが大きいと考えている。そのため、「6:幕速の調整」にあるように、画像中「01」及び「02」で一旦幕の張力を解除してから、部品の復元を行った方が良い。
 
機構部の取り出し
繰り返しになるが、カメラ底部にはセルフタイマー機構が入っているだけであり、あまり故障した話は聞かない。やはり、幕交換や余程の重修理でない場合意外、内部機構とボディシェルの分離は必要無い。
ボディシェルとの分離には、ファインダ外周にあるネジ、調速部底部にあるネジ、プラクチシックス系の場合には巻上げ部にあるネジを外す。
ペンタコンシックス系では巻上げ部にあるネジのほか、フィルム室から押さえているネジを外す必要がある。

次に、プラクチシックス、ペンタコンシックス共にセルフタイマーとレリーズボタンを外し、シンクロ接点からシンクロコードを外して抜き出す。レリーズボタンにはストッパ機構が装備されているので、構造をよく把握しておくこと。
一番気をつけなくてはいけないのが、カメラを構えた時に親指が来る位置にある地板の留めネジを間違えないこと。不用意に地板同士を留めているネジを外すと、調整作業中にシャッタの動きを司る歯車が外れたり、巻上げ機構とミラーのリンク部が外れたりして大変時間がかかる修理が必要になる。
 
再組立
1:再組立・上カバーを外しただけの場合

・巻上げレバーが戻ってきた時の受け金具を左側に押してカバーを被せる。
・ペンタコンシックス系では、フィルムカウンターにかけるスプリングの掛け方と、ボディ内への確実な収め方に留意する。カウンターを一回素通りさせ、きちんと0に戻るかどうか確認する。
・上カバーを被せるとフィルム巻上げに抵抗を感じるという場合には、フィルム巻上げレバーの変形の可能性が高い。割合容易に変形するので、確認しておいた方が良い。
・マウントリングを装着する際に、ネジ込み過ぎないようにする。
・冒頭にも記したように、シャッタダイアルの鉄球、ワッシャの挿入に注意。
2:再組立・ボディシェルから分離した場合

・ボディシェルに内部機構を入れた時点で作動不良になる場合は、まずシンクロコードの配置、次に、ミラーボックスのダイカストに機構部の地板が正しく装着されているかを確認する。
・シンクロコードが適切な配置でない場合、レリーズ不可、ミラーの円滑な動作の妨げ、シャッタの動作の不具合といった大きな影響を及ぼす。
・ファインダ周囲のネジを締めすぎると作動機構に影響が出る率が高い。必要に応じてワッシャを用いる。

その他、本格的な修理等を手がけたい場合にはリペアマニュアルの入手をお勧めする。
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